2018/07/24 01:52

 劇団21世紀枠第15回公演「リングワンダリング2018」無事に終演いたしました。
 ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました!!


 
 さて、まだ3行しか書いてませんが、終演の挨拶はここまでにして、生々しい現状解析に移りましょう。

〇今回の公演について
 ご来場いただいたお客様の数はだいたい前年と同数程度、というのは広告目的で前回公演で大幅な赤字を出しながら三都市ツアーをやったことを考えるとかなりの問題でしょう。
 そもそも、前回のツアーも神戸、京都会場はそもそも客席数が40未満の空間での公演だったので、前回公演でファンを獲得して今回の公演につなげるといういわゆる普通の成長戦略の観点ではあまり効果は期待できません、じゃあなぜそんなことをしたのかといえば、長くなりますが……

①我々には、たくさんのお客さんが必要。
 理由 
 ・表現活動を行うには対象が必要であり、限度の範囲内であればお客さんが多いほうが成果を期待できるため(だいたい1ステージにつき150人くらいまでは、今の21世紀枠のコミュニケーション手法で相手どれると考えられる)

 ・劇団が表現活動を安定して続けていくには安定した収入源が必要(少数から多額を受け取る手法は上記の理由と矛盾するので、多数から低額路線のほうが望ましい)→現時点ではこの収入部分に助成金を充てることでどうにか存続している。


②多数のお客さんに来てもらうための戦略の検討。
戦略1
 たくさんのお客さんを呼べる役者さんに客演してもらう。
→いわずもがな、鉄板の戦略で、冷静に考えればすべての公演で有力な客演俳優を確保できるのであれば、それはもはや人気劇団そのものだと思うのですが、実力がない状態で小劇場界(?)に足を踏み入れると団体そのものが空中分解したうえで吸収される可能性が高いので不採用。

戦略2
 コンクール(?)やフェスティバル(?)に参加して有名になり、その機を逃さずに大き目の劇場に進出して人気の定着化を図る。
→雨後の竹の子のごとく現れる旗揚げ劇団の多くはこのパターンを狙っている(私個人の見解ですが)と思うのですが、この方式で成功するには
 ・自分たちの力量にあったコンクール、フェスティバルを選択するための情報収集能力
 ・コンクールで有名になることを前提にコンクール参加も決まってない時点で大き目の劇場を押さえておく計画性
 ・一連の流れの間、つまり最低でも二年間以上のスパンで確実に団員をつかみ続ける組織力なり結束力

 が、必要かと思うのですが、劇団21世紀枠の組織化が始まってまだ二年強程度ですので、二年間団員をつかみ続けるのがそもそも結構厳しいです。
 また、大き目の劇場に進出してたくさんの人に観てもらうところまではできたとして、果たしてそれだけで人気が定着するのかについては、近々の先行例を見てる限りかなり疑問が残ります(いや、団員がカルト教団のごとく鉄の結束をもって全力で事に当たるならそれなりにどうにかなるだろうとは思いますし、劇場主催のコンクールだったら劇場側が再演や次回公演の場を用意してあげている例が多いとは思いますが……)

戦略3 
 とにかく公演規模=参加者数を増やして手売り枚数を増やしつつ、規模を頼みに各種マスコミへ取り上げてもらい、虚像を膨れ上がらせていく
→人の集まるところにますます人が集まる法則にすべてを任せる手法ですが、これは劇団ではなくて劇場側がとる手法だと思います(主催で事業を興しても新規の客層へのアクセスが期待できない時に、「劇場を知ってもらう」ために、短編演劇祭等を劇場が催すのは理にかなってると思います)
 表現活動を主軸に置く劇団がこの手法をとらざるを得ないような緊急時は演劇なんてまどろっこしいこと言わずにデモとかやるべきだと思うので却下。

 と、ここまで上げた三つの戦略は実行不能、とはいえ戦略3「とにかく公演参加者を増やす」以外の二つが実行できないのはこちらの力量不足が原因ですので


③それぞれの戦略について対策を考える

戦略1「有名な客演による集客作戦」
 ・そもそも演劇分野以外で有名な人を客演に呼べば、小劇場界へ取り込まれる形での空中分解は防げる。
 ・団体の組織化(例えば芸能事務所のような組織化)が進んで団体の体力がつけば、空中分解は避けれる。

戦略2「フェスティバル等を利用して知名度を上げる」
 ・団体の組織化を進めたうえで、きっちり公演計画を立てればよい(フェスティバルで箸にも棒にも引っかからないパターンも想定しておく)

 というのが、単純な対策として考えられます。要は団体の体力がつけばいいってことです(マッチョ思想)

 じゃあ、団体の体力ってなんだよって話ですが、まあもう普通に「組織力」でも「チーム力」でも表現は何でもいいですけど「計画を立案し、それを実行に移し、成果を評価し、改善し前進する」能力でいわゆるPDCAサイクルを回し続ける能力のことでいいと思います。

 現実世界の、旗揚げ三年以内で消えていく集団はそもそも目標が漠然としている→計画がない→でも、公演はやる→目標計画が不在なので成果を評価する軸がない→とりあえずもう一回やってみるの繰り返しで場数を踏むことによる演技的な能力の向上はあっても、集団としての前進がほとんどないか、最初の計画が甘くて(というか、遅滞した時の対処を考えてなくて)うまく前に進めずその場にうずくまってるうちに解散してるじゃないですか(偏見)


④実際の経過
 と、ここまで考えて専任の企画制作担当者を導入して(それまで制作広報担当を後輩に頼んではいたが、みんな社会人になるあたりで頼みづらくなって縁が切れていた)主催と企画制作担当者の話し合い(=計画検討)に団員を巻き込んでいくことを画策したのが3年前の「リングワンダリング」ですが、見事に導入失敗というか仕事を振りすぎて逃げられました(チラシの挟み込みとかの手伝いを想定しているところに、指定席の導入とそのためのフロー構築とか言い出されたらそりゃ逃げます、中途半端なバイト代1公演4万円を渡したのも逆効果だった気がする……)


 以来、制作業務は主催がメインでお手伝い業務を人に振るという形に落ち着きました、というかそうせざるを得なくなりました。(今は各社が予約フォームサービスを出していて、雑にこなすだけならできてしまうのがいいのか悪いのか……)
 それでまあこういうわけで、ある程度反省して、大きく体制を変化させて、その勢いで人を惹きつけてその一時的な勢いの中で急速に団体を成長させるなんていう夢物語は捨てました、そもそもプロデュースユニットみたいな形態で団体を立ち上げておきながら、よく知った人間たちでより多くのお客さんを相手に表現活動したいなんて言う考えが甘いのです、思想と手法がかみ合っていないのです。
 
 より多くのお客さんに対して表現活動をしたいだけなら、とにかくたくさんの資金を用意して、大手の芸能事務所に依頼して、有名俳優に演じてもらえばいいだけです(宗教法人でこのやり方をしてるところはたくさんあるじゃないですか)

 よく知った人間とやりたいだけなら、より多くのお客さんなんて望まずに、親類や知人にみんなで手売りをして、その集客数に見合った規模の劇場でやればいいんです(私が勝手に同窓会公演とよんでるジャンルの演劇をやる団体はこれを立派にやり遂げています)

 これがわかっていながらそれでも自分達の劇団でより多くの人に対して表現活動をやりたい、というなら思想を守りながら手法をあわせていくしかないんです。



 で、ようやく初めの話に戻るんですが、なぜ我々みたいな弱小団体が三都市ツアーなんてやったかと言えば、“団体の体力をつけるため”です、現時点の組織力に対してあのツアーは明らかに過酷な内容で、県外へ出れば身内以外のお客さんの目にさらされるからです。
 
そういう状況に取り組むことを通して、自分たちがやってる演劇が同窓会演劇のような温かい空間での楽しいレクリエーションとは異質な面があることを見つめなおすためです。また、対外的にそれを示すことも目的でした(あちこちツアー公演をやっている身内うけ狙いの団体なんていないですからね、我々がその第一号というとらえ方もできますが……)


 ああ、長くなってしまいましたね……このブログを読む人でここまで読む人は少数というか、いないかもしれないですが……じゃあ、なんでこんな長文を書いたかと言えば、単純な話、次々回の公演に向けての話し合いで団員に配布する現状分析にこれをそのまま流用するつもりだからです。

 こういう文章をブログに乗せてしまうから内輪向けの団体だと思われてしまうのでしょう、でもそれでいいんです、我々が内輪受け狙いの泡沫団体かどうかなんてこと議論するまでもなく時間が結果を出してくれますからね……その時までずる賢く、あがきながら、走り続ければ、いいだけの話です。

 それでは改めまして、この度は第十五回公演「リングワンダリング2018」にお越しくださって、誠に、誠に、ありがとうございました!   椋原メトロ

ともあれ、類まれな生存力でここまで生き延びてきました、これからもどうかよろしくお願いいたします!!